本文記事【詳細】―97年9月26日
経企庁長官へ規制緩和要望メール
尾身幸次経済企画庁長官殿
はじめまして。私どもは、日本サニパック株式会社というごみ袋を専門とするメーカーです。近年、ポリエチレン製ごみ袋の取り扱いでは日本最大(年間2万トン以上)を保ち続けている企業です。 このたびは「規制がじゃまでビジネスが滞っている。おかしいぞ、不便だ、という率直な声を寄せてほしい」という要望を新聞紙面にてお見受けしたので、早速私どもの声をメールさせていただく次第です。 私どもとしては、現在各市町村が実施している指定袋制度が問題です。近年全国では、住民がごみ排出のために用いる袋を自治体当局が独自に指定化する動きが広がっています。当局がポリ袋一枚一枚について所定の文言やマークを印刷するよう強要し、製品の規格、材質にまで指定してくるのです。さらに自治体によっては、流通ルートや価格にまで介入してくるケースがあります。 自治体当局がそうした指定袋制度を通じて目指していることとは、突き詰めていくと「従来の黒い袋を追放すること」に集約できます。その黒い袋は、当局が住民に対し「半年後からは中身の見える袋以外は収集しません」などと真剣にアナウンスさえすれば、大抵は半透明袋への切り替えがスムーズに運ぶものなのです。そのことは尾身長官の選出地である前橋市を含め、幾多の事例によって証明されています。にもかかわらず多数の自治体は、印刷の入った自前の指定袋の制定にこだわり(市町村ブランドを背負った変なプライドのなせるワザとしか思えません)、関連事業者を対象とした規制を次々と新設していきます。 それまでボーダーレスであった国内のごみ袋市場が、まるで時代に逆行するかのように孤立化・細分化しています。自治体がそれぞれ独自に指定化を進めるためです。すでに生産や流通の局面においては少品種大量生産が多品種少量生産へと移行し、マクロで見ると随分と非効率が目立つようになってきています。また認証取得のためには個々自治体に応じて別々な手続きが必要で、事務的にも負担となっています。 かつて極めて健全な自由競争が機能していたごみ袋市場が、ここ最近、急速に利権化しています。自治体による指定袋の入札は、(それ自体は当局の責任ではありませんが)結果的に談合の横行を招いています。なかには当局が入札すら行うのを避け、説得性に乏しい理由をつけて近しい特定業者の“一本釣り”に走るというケースも散見されます。あまり世間は騒ぎませんが(小事であるため気付かないでいるだけ)、怪しむに十分な事例は全国に山のようにあります。こうした「公正」「公平」に関する国際的公準からみて異常とも思える現象が、プレーヤーの新陳代謝を阻み、この業界を国際的に遅れた状態へと追いやっていることは疑いをいれません。 分かりやすい例を挙げます。「住民が混乱すると困るので、指定袋の店頭販売価格は統一とする。当局の定めた価格を守らない店からは認定を取り上げる」という方針のところが全国各所にあります。この「価格破壊」の時代に、価格決定権を行政が握って一体誰の利益が守られるというのでしょうか? もう一例。東京都と同様の認定方式による指定袋制を取っている自治体が全国に多くあります。そのなかには認定業者を数社に限定し、後続の参入を受け付けない自治体があります。理由は「過当競争による共倒れを防ぐため」です。しかし実際に共倒れが起きた例などは過去ありません。 そもそもごみ袋という生活に密着した基礎的消費財の購買を、行政が一元的に集約化するということが、他の消費財には例がなく、異常と言えます。このことに近年の業界の不幸があると日々痛感します。私的財に関する活動は一切市場に返すべきです。 もとより、それが公共利益の観点からみて本当に必要なことであれば一事業者として協力することはやぶさかでありませんが、現状全国で繰り広げられている施策は屁理屈の上にあぐらをかいた当局者の専横のようにしか映りません。これは当社だけでなく、私どもの同業者全体に広がっている共通認識です。 私どもとしては、国と地方公共団体の垣根を超えて、貴庁が事態の改善に向け動かれることを心より望む次第です。個別的に説明不足な点は改めて説明申し上げることもやぶさかでありません。どうか宜しくお願い致します。
September 26,1997 日本サニパック株式会社 自治体業務室 小塩勝男 東京都渋谷区幡ヶ谷1-23-20
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