本文記事2006年
記者の許諾を得て『包装タイムス』(株式会社 日報アイ・ビー)2006年9月4日号より転載します。 ごみ袋40年を振り返る ポリ袋の普及、黒袋から半透明へ
ポリ袋の普及で拡大 ごみ収集の歴史は古く、昔は人や牛が引いた大八車、リヤカーで収集され、1950年代にパッカー車が登場し、収集作業がはじめて機械化された。60年代初めに、ポリペールとポリ袋が登場し、排出容器が使われるようになった。その後は急速に普及し、現在ではポリ袋なしにごみの収集は考えられない状況となっている。すでに、ポリ袋は40年以上、我々の生活に溶け込んでいる製品であり、まさに本紙はポリ袋の登場とともに歩んできたといえるだろう。1980年代までは、リサイクルの優等生といわれた雑色(黒色)ごみ袋が主流であったが、90年代に入り半透明袋が登場。「中身が確認できる袋」ということで、各地域で透明・半透明袋を推奨する動きが高まり、それまでの雑色ごみ袋はほとんど利用されなくなった。 東京都推奨袋の影響 1993年に、東京都清掃局(23区)が半透明推奨袋制度を導入したことで、業界が大きく揺れたことは今も記憶に新しい。この東京都の動きが全国各地に広がり、半透明袋が一気に拡大した。さらに、東京都では焼却炉の負担を抑えるため、燃焼カロリーの低さを理由に、新たな規格として「炭カル」の混入を指定。人口800万超(93年当時の23区計)の巨大商圏の規格変更は、品不足パニックを引き起こし、市場が騒然となった。一部有識者や業界の有志、また本紙でも「炭カル混入に効果なし」と訴えてきたが、導入から10年後の2004年6月に東京都が規格変更を発表。「炭カル」入り以外のポリ袋や、中身が識別できる範囲での再生袋や着色袋(緑と青)も利用できるようになり、さらに厚みの規定もなくなったことで、薄くて丈夫な袋がすぐに市場に出回るようになった。規格に幅をもたせたことで袋の自由度が増し、業界にとってもプラスとなったことはいうまでもないが、指定袋という概念を形成したことは今も業界に大きな影響を残している。 有料袋の登場 東京都が推奨袋制度を導入したほぼ同時期に、北海道の伊達市がごみ袋の有料化を実施した。ごみを3割減量したという事例が各所で盛んに取り上げられ、有料化の機運に火がついた。東京都の半透明袋に加え、有料袋制度が注目されるようになったのである。なお、余談はであるが、伊達市では1枚40〜60円で有料袋を提供したが、この袋は濃く着色されており、中身の識別は不可能。当時の市の担当者によれば、透明にしようとは思ってもいなかったとのことだ。いずれにしても、二段階方式や超過量方式などその方式に違いはあるものの、各地域で有料化が実施されるようになり、現在に至っている。1998年に、人口100万人を有する北九州市が有料化を実施して以来、大都市でも有料化を目指す地域が続出した。最近でいえば、人口50万人を抱える八王子市が04年に、また140万人の福岡市が昨年に実施。しかしながら、本紙でもたびたび報じてきたが、大都市での有料化には懸念材料も多く、実際に両市でも問題が噴出。八王子市では、有料化実施直前にメーカーが予定枚数の半分程度しかできないと市に通達、また福岡市では袋の厚みが規定に達していなかったとのことで市が一部製品で受け取り拒否をするなど、一般ニュースでも大きく取り上げられた。いずれのケースでも共通している問題は、落札価格があまりにも安価であったため、メーカーが規定どおりに製造できなかった点にある。昨今の原料事情をみれば、当然の結果とみてとれるが、有料化の問題はこれだけではない。自由参入がなくなれば必然的に売り先がなくなり、企業の廃業も飛躍的に増える。さらに、利権集中の弊害が顕在化し、制度の安定性が脅かされる可能性もあるだろう。今後も、大都市での有料化は実施される方向にあるが、是非とも自治体関係者には過去の事例も踏まえながら、様々なケースを想定してもらいたい。 今後の動向 東京23区の動向として、有料化を実施する方向にあるようだが、その時期などはまだ不明。ただ、そのやり方としては、区単位で一斉に実施する可能性が高い。たとえば、A区が実施して隣のB区が実施しないケースがあった場合、A区とB区の境に住むA区の住民は、ごみ袋の安いB区で処理する可能性が高いからだ。いずれにしても、東京23区には、93年の新規格導入の際の経験があるだけに、市場の混乱だけは招かない方策に期待したい。また、製品としては、再生品混入など環境対応製品が今後も増えていく方向にあるだろう。ただ、柏市の事例のように、再生品混入のために電気代など多大コストをかけることは、LCAの観点からみても環境対応とは言いがたい。本来であれば、雑色ごみ袋のような製品が環境対応製品としてはもっともふさわしいと考えられる。本紙では、どのような時代になっても我々の生活に密着し関わっていく包装資材、ごみ袋に今後も注目していきたい。(引用資料:小塩勝男氏著「指定袋の論点整理」)
地元テレビが報道 福岡市で落札業者に対し賠償訴訟 福岡のテレビ局(RKB毎日放送)が5月8日のニュースで、福岡市くらしの環境財団が昨年の入札で落札し、厚み不足品を納入した業者2社を福岡地裁に提訴したことを伝えました。 下記URLのページ(テレビ局サイト)から、そのニュース映像を動画で見ることができます。 |
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