本文記事2004年

 



『包装タイムス』9月13日付に掲載された記事を記者承諾のうえ転載いたします。

原料価格高騰の影響
より深刻に

ごみ袋業界最新事情

 昨年来の原料価格高騰が本格的にごみ袋業界を不安に陥れている。長く安定していたポリエチレン(PE)相場が昨秋から変調をきたしており、高値水準が続いているからだ。海外相場における過去3年間の推移は、1トン当たり550〜650ドル前後であったが、昨年10月から上昇を続け、今夏には大台の同1000ドルを突破。9月に入り、低密度ポリエチレン(LDPE)は同1300ドル台に突入している。国内の各原料メーカーでは、今年に入ってからの第3次値上げを決定したほか、一部メーカーでは減産に踏み切った。三菱化学では9月1日、水島事業所のエチレン生産設備を同日より12日間停止すると発表。冷却水用海水配管の修理のためで、同事業所のエチレン生産は2万トン減る見通し。さらに同日、昭和電工の大分エチレン設備も、台風などの影響により操業停止となった。こうした状況を受け、ごみ袋の各メーカーでも本格的な値上げ交渉に突入したようだ。ある大手メーカーでは、20%以上の2次値上げに動くとのことで、価格交渉の余地なしで臨んでいく構えだという。大手バイヤーでは、値上げはおろか数量の確保を不安視するムードも出始めている。(本間昇)

値上げ交渉待ったなし

各種要因が絡み高値圏に

 PE総場は過去、産油国の政情不安や戦争、大規模コンビナートの火災事故をきっかけとして数年おきに混乱を経験してきた。今回の価格高騰の背景は、イラク情勢をはじめとして、ベネズエラの長期ストや中国の好景気など複数の要因が絡みあっての動きと捉えることができる。過去と比べても、逼迫感がより深刻であるため、不安心理も増幅され、悪循環に陥っているものと思われる。

エチレンガス高騰も影響

 PEは、エチレンガスを重合して製造されるが、いうまでもなくこのエチレンガスも高騰している。大手ごみ袋メーカーでは、原料メーカーがエチレンガス高騰によりコスト転嫁した条件では到底販売ができないことから、定期修理を口実に操業を停止し、減産に動いているのではないかと予測する。また、好景気に沸く中国では現在、相場の状況に関係なくPE原料の引き合いが強い。中国の原料メーカーは増産に力を入れており、他社メーカーの保有するエチレンガスを高値で買い集めているようだ。こうした状況から、日本やシンガポール、中東など周辺諸国の原料メーカーにとって、自社が保有するエチレンガスを加工して製品化するよりも、中国に転売するほうがはるかに得策なのである。原料メーカー間では、利ザヤを目的にエチレンガスを2次売買する動きもあるようだ。

PE相場、海外高・国内安に

 今夏のPE国内総場は、高密度ポリエチレン(HDPE)が1キログラム当たり105円〜110円、LDPEが同110円〜125円で推移。また、海外相場ではHDPEで1トン当たり約1150ドル、先にも触れたがLDPEは同1300ドル台に突入した。海外価格をキログラム当たりで日本円に換算すると(為替110円で換算)、HDPEが1キログラムあたり約126円、LDPEが同約143円となる。つまり、近年例のない”海外高、国内安”という逆転現象を引き起こしているのだ。こうした状況から、国内原料メーカーは価格の上がらない国内工場への販売量を絞り、高く売れる海外工場向けの出荷を増やしている。

サプライヤーの工場閉鎖相次ぐ

 海外のごみ袋サプライヤーは、販売先を日本から比較的高値が通用する東ヨーロッパなどへシフトする動きに出ているもよう。また、中国工場の経営者の中には、自社で原料をつぶし製品製造に見切りをつけ、同業への原料売買ビジネスを開始する動きが目立っている。ワーカーの解雇が日常的に行われている中国ならではといえるが、いうまでもなく工場の一時閉鎖が相次いでいる。工場閉鎖は今後もさらに増えていくものと予測されている。
 一方、国内のごみ袋サプライヤーのもとには、海外製品が高騰している状況からオファーが殺到しているようだ。しかしながら、長期にわたる空洞化により、機会の老朽化や技術者不足など受け入れ態勢が万全とは言えない状況。実際のところ、供給量は微増にとどまっている。さらに、国内サプライヤーに対しても原料メーカーからの供給カットが始まっており、国内調達も期待できないのが現状。また、原料メーカーからの値上げ通告を飲まざるを得ない状況でありながら、ユーザーへの値上げは遅れており、商売に見切りをつける工場経営者も出始めているようだ。原料高騰の局面で、製品への価格転嫁が進まなければ、倒産に追い込まれるサプライヤーも出てくるだろう。

玉不足で指定袋供給に不安も

 小売店の状況は、大手ほど値上げを受け入れているもよう。しかしながら、ある小売店では、商談が成立せずメーカーに見切りをつけたが、新規供給先が見つからずこれまでよりも高いスポット買いでまかなっているとの話もある。調達量不足で販売実績が前年割れとなり、バイヤーの責任問題になるのは避けられないとの声も聞かれる。
 原料価格高騰の状況は、いうまでもなく自治体の指定袋にも影響している。前年実績を大幅に上回る単価で妥結している自治体もあり、予算にも狂いが生じているもよう。ある業者では、長期契約の自治体との契約条件に耐えられなくなり、違約金を払い供給から降りるケースもでてきた。玉不足問題が本格化するのはこれからであり、今後供給責任を果たせない自治体が出てくる可能性も否定できない。とくに、大都市への供給を1社で対応している業者ほど、数量を確保するのに困難を極めることは想像に難しくない。



『包装タイムス』7月5日付に掲載された記事を記者承諾のうえ転載いたします。

ごみ袋業界に激震

23区清掃協議会が規格変更
着色や再生素材利用も可能に
炭カル入り以外も「推奨」へ

6月24日、ごみ袋業界に衝撃が走った。東京23区清掃協議会(会長=室橋昭江江東区長)が可燃ごみ収納袋(東京23区推奨ごみ袋)の規格を変更し、今年12月からの実施を明らかにしたからだ。従来規格の炭酸カルシウム入りPE袋(炭酸カルシウム30%以上含有、以下炭カル入り)以外に、炭酸カルシウム未使用のPE袋や、再生素材(PEあるいはPET)あるいは生分解性素材の袋が「推奨」に追加され、「中身が識別できる範囲」との制約はあるものの青色および緑色の着色も可能となる。炭カル入りが「推奨」されてから10年、焼却炉の性能は飛躍的にアップした。同協議会はこうした実情を考慮し、炭カル入りのみを「推奨」とする意味はなくなったとの判断から、今回の規格変更に踏み切った。(本間昇)

東京23区は炭仮入りの燃焼カロリーの低さに着目し、焼却炉にかかる負担が小さいとの評価から、平成5年に「推奨」規格品として位置づけた。しかし、ダイオキシンの発生抑制を目的とした法整備が進み、平成14年12月以降、800度以上の高温燃焼に耐えられる焼却炉が各地に整備されてきたことで、推奨ごみ袋が炭カル入りであることの必要性はなくなりつつあった。一方、近年は薄くて強度に優れたメタロセンLLDPEタイプや再生PETを素材にしたものなど、新製品が相次いで登場してきたこともあり、炭カル入り以外の袋を利用したいとの声が次第に強まっていた。業界も@炭カル入りを利用するメリットがなくなってきたA炭カル入りの利用はむしろコストアップ要因−−−とし、炭カル入りのみの「推奨」規格に対し疑問を投げかけてきたのが実情。同協議会は、こうした声も参考に、数年前より「推奨」規格の見直しを検討してきた。結果、今年が炭カル入りの「推奨」から10年という節目も重なったため、今回の規格変更に至った。

新規格は、塩素系プラスチックを除いたPE製等で有害重金属を含まないものを素材として指定しており、厚みの規定はなくなった。強度や大きさ、透明度はこれまでと同様(強度は従来の「キログラム/平方センチメートル」からメガパスカルに単位のみ変更)。透明度については、中身が見えすぎるとプライバシーの問題にかかわるとの判断から、HDPE100%のものを基準とし、透明度の高いLDPEなどを使用する場合は、透明度を抑えるために酸化チタンなどを混入(比率の規定はない)する必要があるとしている。色は原則として白系だが、町の美観を損なわないよう配慮し、青色と緑色を基調としたものに限って着色が認められている。

指定袋制度それ自体は現状のままのため、「東京23区推奨」といった袋への印刷は必要。炭カル入りは12月1日以降も使用できるため、供給各社のストックが不良在庫となる問題もない。

今回の東京23区推奨ごみ袋の規格は、全国の自治体への影響も少なからずあるようだ。東京都が指定袋制度を導入した際、各自治体もそれにならった経緯があるだけに、現行制度の見直しが一気に加速する可能性もある。



『包装タイムス』(2004年6月14日付)に掲載されたインタビュー記事を転載いたします。

トップインタビュー

今こそ業界は一致団結を
1社独占の入札方式は業界衰退を助長

ごみ袋業界に30年以上携わり、業界の動向を冷静に分析しているのがケミカルジャパン(東京都杉並区)代表取締役の武田一弘氏。武田氏は、業界の中でも特に広い交友を持ち、各社と積極的な意見交換をしていることやその温厚な人柄から、業界8社で構成される「指定ごみ袋を考える会」の会長も努める。周知のとおり、同会は指定ごみ袋をはじめとする様々な規制に対して疑問符を投げかけ、市町村と積極的な意見交換を行っている。今回、武田氏には近年の業界に対する意見や同会の取り組みの現状など、業界の未来を占ってもらうべく話を伺った。

現在、ごみ袋業界は未来を左右する非常に重要な時を迎えていると思います。特に、ここ何年もの間続いていた価格競争のつけが、最近の原料価格高騰によって、自分で自分の首を絞める状況に陥っていることは否めません。ある企業さんでは、利益のでないごみ袋から撤退したいとの意見も出ているほどで、各企業さんともに苦しい現状であることは明らかです。長期的に見ても、原料市場は高値で推移することが予測されており、まさに各企業ともに生き残るか、生き残れないか瀬戸際の状況であると言えましょう。

こいうした価格競争のつけとともに、業界全体を不安に陥れているのが、市町村の1社独占による指定ごみ袋の入札方式であり、私が会長を務める「指定ごみ袋を考える会」でも、各市町村と積極的に意見交換を行っています。こうした入札方式はこれまでも多くの市町村で採用されていますが、今年も10月から八王子市で実施されるほか、人口130万人以上の大都市である福岡市も同方式による指定ごみ袋の導入を検討しています。

経済活動は各企業とも自由に行われるのは当然のことであり、企業の育成を担うべき行政がそうした活動に規制をもたらすことが許されてもいいのでしょうか。もちろん、努力の足りない起業が淘汰されることは仕方のないこととしても、争う土俵すら用意されないのでは話になりません。もし、今回の福岡市が1社独占の入札方式を導入すれば、ほかの大都市も追随することは予想されることであり、価格競争すらできない状況となることは火を見るより明らかです。ましてやこの不景気のときに、多くのメーカーはおろか問屋なども倒産や廃業に追い込まれるでしょう。

今こそ、業界が一致団結してこうした取り組みについて積極的に意見していくべきであり、業界が衰退して自社の繁栄はありえないことを認識すべきです。現在の厳しい状況に窮するのは、利益を追求するのが企業の宿命である以上仕方のないことですが、そのさらに先にある厳しい現状をしっかりと見据えていくことが今は重要ではないでしょうか。ごみ袋業界の未来は、まさに我々の今後の取り組みによるところに左右されるでしょうし、私自身この業界に長年携わる者として、さらなる業界の発展に微力ながら尽力して生きたいと思っています。



「ニューライフ」2004年3月号に掲載された対談記事を転載いたします。

みんなで考えるこれからのごみ問題

福岡県リサイクル総合研究センター長
北九州市エコタウンセンター長 
福岡大学名誉教授
花嶋 正孝 氏

指定ごみ袋を考える会会長 
武田 一弘 氏

 循環型社会構築に向けて消費者企業政府が本格的に動き始めました。しかし理想と現実の間にある溝はまだ深いのです。今回はごみ袋問題にスポットを当てこの溝を埋める解決の糸口を探ってみました。

ごみ問題解決に不可欠な、専門家の意見

花嶋 ごみ問題にも色いろな専門家がおります。私はごみの埋め立てを専門としております。貴会では特にごみ袋に関して取り組んでおられるのですね。

武田 はい。1993年、東京都が炭酸カルシウム入り指定ごみ袋を導入する際、住民、ごみ袋メーカーの間でその効果が不明確で問題となりました。
 これをきっかけとして、1995年秋「指定ごみ袋を考える会」が発足しました。以来、我われはごみ袋の専門家としての立場から、炭酸カルシウム入りごみ袋、指定ごみ袋利用への問題意識を高め、理想的なごみ処理のシステムを実現できるよう積極的に啓蒙活動を展開しております。また指定袋を検討中の自治体を訪ね、助言や情報提供をしております。

花嶋 昨今では福岡市の家庭ごみ有料化に際し、新たな提案をなさっておられるそうですが。

武田 はい。福岡市ではごみの有料化をすべきか、すべきでないかをもう1年も話し合っています。ところが有料化の方法論について、我われのような専門家からの意見をなかなか受け入れてくれません。1度システムが制定されると、メーカーも消費者も皆、不条理な制度に対して戦うことを諦めてしまうのですが、我われは発足以来戦い続けそれなりに勝利も収めてきました。

花嶋 指定ごみ袋の問題は、流通、製造業者の側面も絡んでおります。解決の難しい問題ですね…

武田 そうなんです。だからこそごみ袋の専門家の意見が必要なのです。しかし現状は、これはごみ問題の検討会だから…などといって問屋小売の専門家は審議会への出席を断られるのです。これで指定袋制度が導入されるのですから、大変違和感を感じます。専門家なしで制定されるシステムですから当然現実離れしているところが多くなります。

注目される福岡市のごみ有料化  

 現在人口30万人以上の大都市においてごみの有料化を実施しているのは、北九州市のみ、次いで今福岡市が名乗りをあげようとしています。(注…実際 には人口35万人の長野市でも超過量有料制を実施しています)
  福岡市に続いてごみの有料化を検討している大都市が幾つもあります。ですから福岡市の取り組みが今後日本のごみ問題に与える影響は多大です。
  我われ考える会では、指定ごみ袋の取り扱いを特定企業に固定する1社独占制導入による混乱を防ぐため、従来の流通を生かしたごみの有料化手法を提案しております。

花嶋 今の流通が何の支障もなく流れている中、これを活かすことのできるごみ袋を利用したシステムは大変理想的と思います。1社独占制というのは宜しくないですね。

武田 はい。これは民業圧迫どころか民業乗っ取りだと思います。特に今後の大都市への影響を考えると、益ます放ってはおけません。

シール方式は却下 そのココロは…

花嶋 市民の中には善意で道路のごみも自分の家の袋に入れて捨てておられることがよくあります。有料化制度では、公共のごみであっても自分の家のごみ袋に入れれば自分でお金を払わなければいけなくなります。このような場合、せっかくの善意が無駄になってしまうという問題もあるのです。有料化を導入するのであれば、公共や道路のごみを市が清掃するなどのシステムをきちんと確立する必要があります。

武田 先生は、具体的にどのような方法が今後のごみ袋問題解決をサポートできると思われますか。

花嶋 私は、ごみ有料化において指定ごみ袋でなく、従来のごみ袋にシールを貼る方式が宜しいと思います。シールならば誰でも簡単に利用できるし、従来のごみ袋を利用し流通を変える必要もない。

武田 考える会では、当初福岡市にもそのシール方式を提案しておりました。

花嶋 ほお。

武田 事実、東京都ではシール方式で上手くいっているところがあります。当初東京都にも指定ごみ袋をやろうという計画がありました。しかしこれを導入すれば大変なことになるとわかり、シール方式を採用することとなりました。
  しかし福岡市では却下されてしまいました。

花嶋 それは何故ですか。

武田 市の方がおっしゃるには、清掃職員の手間がかかるという理由でした。シールと中身を見分ける作業が無駄だと…。
  お役所の人は作業に1秒でも時間がかかると人件費を浪費するとお考えになっておられるようです。

花嶋 しかし実際は指定ごみ袋を利用すれば、役所の事務手続きが煩雑になるね。余分に人を雇わないといけないだろうし。

武田 その通りです。数量管理などは特に大変ですよ。
  このように我われごみ袋の専門家と福岡市の間に意見の食い違いが生じております。消費者とメーカーにとってもより良いシステムを実行できるよう、謙虚に我われのアドバイスを受け入れてもらいたいものです。

指定ごみ袋でごみの減量?

 指定ごみ袋導入狙いの一つは、ごみの減量です。

花嶋 ごみは減らないと思うね。なるべく1つの袋にたくさん詰めてごみ袋の数を減らすことはできるかもしれないけれど…ボリュームは減ってもウエートが増える可能性が高いですね。

武田 同感です。ごみの量は有料化にしても、数年すればまたもとに戻ると思います。無理なダイエットと同じです。リサイクルとか別の方向へ持っていかない限りごみは減りませんよ。

花嶋 ごみ減量のためにはまず、包装容器を少なくすることが大切だと思いますね。私は買い物に行くとき、袋は要りませんからシールを貼ってくださいというのです。包装容器や包装紙が全部ごみになるわけですから、こういう無駄なシステムをなくしたほうがごみが減ると思います。
  私は仕事柄色んな書類が送られてきますが、中身より箱の方が大きいことがよくありますね(笑い)クッション材まで入って…これは過剰包装もいいところです。

武田 海外では品物を裸で袋に入れてくれます。こういう点は日本も見習わなくてはいけませんね。

ソフトとハードの共存できる日本を目指して

 近年リサイクル先進国とされるドイツへの見学ツアーが流行っていますね。

花嶋 そうですね流行ってます。しかし私はそのようなツアーに関心が持てません。そんな1、2週間だけ滞在していても、何も現実は見えてこないと思うのです。日本だって誰かが見学に来れば国の1番良いところを見せるでしょう。ドイツだって同じです。ですから、日本から何千人の人を短期間派遣するなら、むしろ数人の人を1年間ぐらい派遣する方が有効だと思いますね。
  皆さん見学ツアーに行かれて、向こうの宣伝に踊らされしきりにドイツは素晴らしい!とおっしゃるのですが、それはどうかと思います。見学するなら徹底してやりなさいとアドバイスしています。

武田 確かに見学コースというのは1番模範的な場所を紹介するコースですね。
  先生は、実際のところ欧米のリサイクルは進んでいると考えられますか。

花嶋 リサイクルの概念を華ばなしく打ち出すことや教育制度などソフト面からすれば向こうの方が進んでいるといえますね。しかし、それを実際に行なっているかどうかは行ってみないと分かりません。
  一方、ドイツで開発されたものを日本が技術として完成させているシステムは幾つもあります。日本は技術としてきちっと作り上げる能力は非常に高いです。

武田 なるほど。以前見学ツアーに参加したエンジニアに聞いた話ですが、技術面ハード面に詳しい人は同じような技術が既に日本に存在していたり日本の方が進んでいることに気づくそうです。

花嶋 私が現在センター長を務めている福岡県リサイクル総合センターではリサイクルのソフト面とハード面とが調和のとれた形で循環型社会に貢献できるよう取り組んでおります。従来日本におけるリサイクル事業はハード面に光が当たりすぎてソフト面は割と蔑ろにされていました。

武田 ソフトとハードを上手く融合させるために行政と専門家が連携していかなければなりませんね。
  指定ごみ袋の問題も、流通、製造業など複数の側面から上手く解決していかなければなりません。行政と我われごみ袋メーカーの連携によって初めてベストな解決が生まれると思います。

花嶋 日本人は順法精神が旺盛な国民です。1度基準を作れば必ず守ります。ごみの捨て方にしてもそうです。

武田 諸外国は基準は厳しいけれどもその基準を満たしているかどうかのチェックは厳しくないんです。

花嶋 その点、日本は基準が甘いけど基準を守ることには厳しい。

武田 車が通っていないのに赤信号でもずーっと横断するのを待っているような人たちです(笑い)
  基準をいくら厳しくしてもそれを実行しなければ意味はありません。しかし、日本人のような順法精神旺盛な国民の場合行政の判断を間違ってしまえば大変なことになります。

花嶋 そうですね。何ごともバランスというのは大切だと思います。ソフトとハードのバランスを考え、行政、メーカー、消費者、皆さんの協力によってこれからのごみ問題も解決へ向かうことを願います。



公取委「ダイオ抑制」不当表示に例示

【2004年1月9日】

平成15年に法改正された景品表示法にかんする指針のなかで、効果が実証されていない不当表示商品として「焼却時にダイオキシンを発生させないと標ぼうする商品」が例示されている。内容は公正取引委員会のウェブサイトで確認できる( http://www.jftc.go.jp/keihin/3/hajime.htm )。

このことから「ダイオキシン抑制」に効果があると表示されたごみ袋は、発売者が合理的な根拠を示せなければ公取委の取締り対象となることが確実となった。メーカーは事実上「ダイオキシン抑制」を表示できないことになり、製品やカタログ等の表示に何らかの対応を迫られることが必至と見られる。

市場では97年から金属類など不純物をポリエチレンに練りこんだものを「ダイオキシン抑制」と称して営業する形が見られるようになり、その後混入物を違えて何社かが参入している。塩素と反応することでダイオキシン発生を抑えるというのが共通する理屈だが、その効果を認める公害防止技術分野の専門家はいない。

全国では百を超す市町村で指定袋に「ダイオキシン抑制」商材と同じ素材が使われている。採用を決定した行政当局にも厳しい目が向けられることが今後予想され、このことが契機となり一気に採用を見直す動きが広がるのではと関係者は見ている。

 



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